夏を経てなお大量のアルバムがのこっていた閖上をはじめ、写真洗浄が遅れていた場所でも、被災地以外のボランティアとの連携を経てどんどん写真洗浄が終わり、洗浄済み写真と持ち主とが出会う方法についてどうするべきか? ということが大きな課題となってきます。写真の保管場所も問題です。写真洗浄及び、その後の写真展示を行っている場所は、建物自体が被災していることも多く、危険な場所もあります。体育館などは本来の使用用途に戻さなければならず、あちこちの現場で問題が起こっていました。
写真を手にとって見られる状態で展示・保管しておきたい気持ちと現実的な制約の間で、解決方法の一つとして、各地でデジタル化が進められていきます。写真展示場と被災者の住む地域が遠い場合、ただ待つのではなく、仮設住宅の集会所まで出向いて、一時的に写真展示を行うなど、様々な試みが繰り返されています。ノートパソコンやiPadなどでデータを持ち運び、閲覧してもらえるという利点はありますが、だからといって洗浄を済ませた写真たちを捨ててもよいということではありません。あくまでも実際の写真を持ち主にお返しするためのデジタル化。そのことを忘れないで欲しいと、私たちは思っています。
地震直後の被災現場で自衛隊の人々が拾ったのはUSBやCD-Rでなくアルバムでした。泥だらけの写真を前にしてボランティアの人たちは、誰に頼まれたわけでもなく、自然とそれらを洗いはじめました。そして何より、被災者の皆さんは写真やアルバムを真っ先に探しました。
私たち富士フイルムは、その事実に触れあらためて自分たちの使命について考えました。